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分離した蒸気相を戻す場合--地熱への用途

さて,扱っている水溶液が,地熱井の熱水ラインあるいは熱水堰から採取された 場合,この溶液は地下の貯留層中の熱水とは組成が異なっている. なぜなら,坑井を熱水が上昇してくる間に沸騰が起こって,流体は 熱水と蒸気が混じり合ったものとなっているからである.この混合物は セパレータを通して分離され,蒸気ラインを通じて 蒸気は発電機に導かれ,熱水ラインを通じて熱水は地下に還元される2.2. したがって,地下の貯留層中の熱水の化学種組成を知りたい場合, 熱水ラインから採取された水溶液に蒸気として失われた分を計算によって 戻す必要がある. 計算によって得られた,熱水の組成が本当に貯留層中のものと 言えるのかについては,幾つかの条件が必要であるが,これについては 利用の章で触れることにして,ここでは,その条件が満たされて ,かつ必要なデータが次のように与えられているとして話を進める.

熱水ラインから採取された水溶液については,既に記した 計算で H+, H2Oを含む各独立成分について 式 2.262.30で定義されるMtがわかっているものとする. 地熱井から得られる蒸気中には水の他に通常 CO2, H2Sが含まれるが, ここではこれまでの例に則して CO2のみが蒸気に 含まれているとする. CO2は独立成分を用いて次の反応式で表現される.


\begin{displaymath}\rm CO_2 = HCO_3^-+H^+-H_2O
\end{displaymath} (2.31)

したがって,蒸気( H2O)1kg中に含まれる CO2nCO2モルであるとして, 次のように定義された蒸気分率xが 知られている場合

\begin{displaymath}x=\frac{蒸気中の{\rm H_2O}
モル数}{蒸気中の{\rm H_2O}モル数+熱水中の{\rm H_2O}モル数}
\end{displaymath} (2.32)

蒸気分離以前の貯留層中の熱水の独立成分の各総和Mtfは 熱水ラインで採取された水溶液の独立成分の各総和Mtnwを用いて 次のように求まる.
$\displaystyle M^{tf}_{\rm HCO_3^-}$ = $\displaystyle M^t_{\rm HCO_3^-}+n_w \frac{x}{1-x}n_{\rm CO_2}$ (2.33)
$\displaystyle M^{tf}_{\rm H^+}$ = $\displaystyle M^t_{\rm H^+}+n_w \frac{x}{1-x}n_{\rm CO_2}$ (2.34)
$\displaystyle M^{tf}_{\rm H_2O}$ = $\displaystyle M^t_{\rm H_2O}+n_w \frac{x}{1-x}(55.51-n_{\rm CO_2})$ (2.35)
$\displaystyle M^{tf}_{\scriptsize 他の独立成分}$ = $\displaystyle M^t_{\scriptsize 他の独立成分}$ (2.36)

ここでやはり H2O 1kgのモル数を55.51と置いている.こうして Mtfが定まれば,これを式( 2.26)-( 2.30) の左辺に置いて,貯留層温度での平衡定数Kを用いて解けば貯留層中の 熱水のその場での化学種組成やpHが求まることになる.



Naoto Takeno
1998-05-25