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pHが未知の場合

次に,この水の温度を変えたらどうなるであろうか.平衡定数は温度により 異なるから, 25℃のときと同じ化学種組成, pHではありえない. しかし,温度を変えている間も,系への物質の出入りはないので, MtCa++MtHCO3-MtH4SiO4° は一定のはずである.そして, MtH+MtH2O も一定であることに注意する必要がある.しかし, MtH+MtH2O は化学分析によって直接求まる量であろうか? 否.しかしながら,我々はすでに先ほどの計算によって, 25℃での溶存化学種組成を求めているから.この結果と式( 2.29), ( 2.30)を用いて MtH+MtH2Oを定める ことは容易である. つまりまとめると次のようになる. pHを測定した温度とは異なる温度での 水溶液の化学種組成や pHを推定するには,まず, pHを測定した 温度での化学種組成を計算し,次に,各独立成分についてMtを定めればよい. この例では MtCa++MtHCO3-MtH4SiO4°MtH+MtH2O を 定めて式( 2.26)-( 2.30)の5方程式全てを, 目的とする温度2.1で解けばよいことになる. この時平衡定数Kの値は表などで与えることができ, 水の活動度 aH2Oや溶存化学種の活動度係数 γは溶存化学種 のモル濃度から推定することができるので,結局この5式の中で未知数は, mHCO3-mCa++mH4SiO4°mH+およびnw の5つのみとなる. 一般に,中性付近で,溶液だけの均質反応のみで,鉱物の晶出を考えない場合, この例のような計算では,nwはほとんど変化がなく1であり,式( 2.30) はなくても正しいことが多い.しかしながら,溶媒である水からの H+イオンの 出入りを表現することは,液性の変化の大きい反応を表現したり, さらに発展して珪酸塩鉱物の晶出を扱うシミュレーションを行ったりする 場合には必須であるので,ここでは,より厳密で一般性のある表式を採用した.



Naoto Takeno
1998-05-25