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2000年3月31日13時07分〜の噴火による降灰分布と降灰量

総合観測班地質グループ(地質調査所,北海道大学,道立地質研究所,道教育大旭川分校)

降灰分布調査,採取(山元,川辺,宝田,吉本,石丸,垣原,遠藤,野呂田,新井田,本間,工藤)

降灰量分析(宝田,吉本,石塚,工藤,相沢,北側,平賀,本間,江草,石井,高橋)

 3月31日13時7分〜の噴火は,16時ごろには噴煙の勢いが弱まった.そこで,宝田,廣瀬,吉本の3名は,洞爺湖北東岸付近の降灰調査に向かった.16時30分ごろ,洞爺湖北東岸の仲洞爺で厚さ数mmの降灰が確認できた.降灰の多くは,直径数mm以下の凝集状態(未固結の火山豆石状態)になっていた.民家の前に設置されていた,ごみステーションの蓋の上に堆積した降灰を面積測定(49cmx58cm)したうえで,すべて採取した.さらに,仲洞爺キャンプ場のブロック上に堆積した降灰についても,面積測定したうえで4サンプル採取した(13x73cm, 13x79cm, 12.5x79cm, 12.5x60.5cm).採取したサンプルはその日のうちに,車で北海道大学に運んだ.また,一部のサンプルは地質調査所にも送った.北大で乾燥重量を測定した結果,この地点の降灰量は1m2あたり約400gとなった.

 翌4月1日は,北海道大学,道立地質研,地質調査所の関係者が分担して,3月31日の降灰分布限界の調査と定面積試料の採取を行った.北海道大学の新井田,本間,工藤のグループは支笏湖周辺,道立地質研の石丸,垣原のグループは大滝村,喜茂別(きもべつ),支笏湖周辺,道立地質研の遠藤,野呂田のグループは登別市,地質調査所の宝田,川邊のグループは立香(たつか),久保内,オロフレ峠,北湯沢周辺,地質調査所の山元と北海道大学の吉本は洞爺湖東岸の現地調査を行った.定面積試料の採取は,降灰量算出のために行った.まだ多くの場所で残雪があったため,折れ尺などで30cmx30cmの面積を測定した上で,雪の上に堆積した降灰を雪ごとプラスチック製のサンプル袋に採取した.4月1日の風向きは北西の風によって,主として有珠火山の南東方向に降灰があった.そのため,降灰調査の最中に,4月1日の降灰が混入することはほとんどなかったと考えられる.降灰分布限界やサンプルの採取地点,サンプルはその日の夕方に取りまとめた.31日の降灰は約65km離れた札幌市内南部でも観測されたという情報があった.

 また,5月上旬には,噴火状態がやや安定してきたため,洞爺湖温泉東部に立ち入り可能となり,地質調査所の中野と山元が,N-A火口から東北東3.3kmの地点にあるサンパレスホテル周辺の降灰調査を行った.ホテルの東側で1ヶ所,西側で1ヶ所,3月31日の噴出物の定面積試料採取を行った.乾燥重量を測定した結果,ホテルの東側で6500 g/m2,西側で15,400 g/m2となった.

 調査の結果得られた3月31日13時7分〜の噴火による降灰分布図を第1図に示す.降灰分布は,有珠山付近では狭く幅2.5km程度であるが,火口から離れるにつれて次第に幅が広がっている.火口から約25km離れた大滝村周辺では,幅は約20kmに広がっている.降灰主軸は,有珠山・洞爺湖周辺の火口から約15kmまでの範囲ではN65oEの方向であるが,次第に北寄りに向きを変え,火口から約45km離れた支笏湖周辺でN30oEの方向になっている.

 現地調査で得られた定面積試料の乾燥重量を測定し,等重量線図を作成した上で,降灰量を算出した.雪とともに採取した降灰試料は北海道大学の実験室に持ち帰り,処理を行った.乾燥重量の測定は,北海道大学の石塚,吉本,工藤,相沢,北川,平賀,本間,江草,石井,高橋が行った.

 乾燥重量の測定は下記の方法で行った.(1) 大きいホーロー製容器やビーカーに,雪と共に降灰試料を入れ,ホットプレート上で雪を溶かす.(2) 灰が完全に下に沈むまで,半日程度放置する.(3) 透明な上澄み部分の水を捨てる.(4) あらかじめ乾燥重量を測定したビーカーに試料を移す.(5) 恒温器の中に入れ,105℃で加熱する.(6) 完全に乾燥したら,外に出して冷ます.(7) ビーカーごと精密はかりで重量を測定する.(8) ビーカー自体の重量を差し引いて,降灰の乾燥重量を求める.

 3月31日の降灰では19地点の降灰の処理を行い,乾燥重量を求めた.各地点の乾燥重量をもとに,等重量線を作成した.各地点の乾燥重量を1m2あたりのグラム数に換算し,地図上にプロットした(第1図).これらの値をもとに,2, 4, 8, 16, 32, 64, 128, .....,16384g/m2の等重量線図を引いた(第1図).等重量線の作成と降灰量の算出は,宝田,吉本,北川,平賀,相沢が行った.フリーソフトウェアのNIH imageや,グラフィックソフトウェアであるDeneba社のCANVAS ver. 7を使用して,それぞれの等重量線が占める面積を求めた.

 縦軸に各等重量線の重量(kg/m2)をとり,横軸に等重量線の面積(m2)をとって,常用対数グラフ上にプロットした(第2図).各等重量線の値は,1本の直線ではなく,いくつかの線で近似できた.64g/m2と256g/m2のデータのところで折れ曲がりが見られた.64g/m2よりも外側の8, 16, 32, 64 g/m2の4つのデータをもとに最小2乗法で近似直線を引いた(y=-2.2355x+17.26; x=log10 Area (m2), y=log10 weight (kg/m2)).最小2乗法による近似直線は,Microsoft社のExcel 2001を使用して求めた.同様に,64, 128, 256 g/m2の3つのデータをもとに近似直線を引いた(y=-1.4065+10.417).さらに,256, 512, 1024, 2048, 4096, 8192, 16384 g/m2の7つのデータをもとに近似直線を引いた(y=-0.8212+5.8617).3本目の近似直線を火口近傍の104m2(=100mx100mの領域)まで延長すると,(近似直線にx=4を代入してy=2.58となり,102.58=380 (kg/m2)であるから)平均密度1500kg/m3とした場合,層厚は25cmとなる.8月下旬の現地調査の結果,3月31日の噴出口であるN-A火口の中心から90m離れた地点での層厚は約1mであった.そこで,16,384g/m2のデータと104m2の地点での層厚1mのデータの2つのデータを直線で結んで,4本目の近似直線とした(y=-1.1988x+7.9714)(第2図).このような,火口近傍の層厚が遠方から外挿して求めた値よりもかなり大きくなる現象は,1996年や1998年の北海道駒ヶ岳火山の噴火の際にも見られた(宇井ほか,1997a, b; 宝田ほか,1999).火口近傍には,遠方まで到達しない小規模な堆積物が多数累積することや,多くの弾道噴出物が堆積していることが原因であると考えられる(宝田ほか,1999).

 これらの4本の近似直線を使い,区間ごとに積分を行って総降灰量を算出した.区間ごとの積分は数値計算ソフトウェアのMathematica ver.2.2を使用した(第3図).その結果,64g/m2よりも外側の領域では9300トン,64〜256g/m2の領域では14,000トン,256〜16,384g/m2の領域では61,000トン,16,384 g/m2〜火口近傍(104m2)の領域では40,000トンとなった.これらの値を合計すると総降灰量は124,000トンとなった.

 4月の速報値は,5月の山元,中野によるサンパレス付近のデータがなかったため,総降灰量は75,000トンであった.その後,サンパレス付近のデータを追加して再計算を行った結果94,000トンとなった(宝田・羽坂,2000).この報告では,さらに8月下旬に行った火口周辺での層厚のデータを加えたため,124,000トンとなった.この値は,日本大学を中心とした調査グループ(有珠山噴火火山灰合同調査班)による調査結果(12万トン;http://www.geo.chs.nihon-u.ac.jp /tchiba/usu/volume2.htm)とほぼ同じ値となった.

(宝田ほか,2001,印刷中による)

第1図 2000年3月31日13時7分〜の噴火による降灰分布図.外側の太い線は,降灰分布限界を示す.分布限界内部のコンターは,等重量線(1m2あたりのグラム数)を示す.小さい丸は調査地点を示す.調査地点の数字は,定面積試料の乾燥重量から算出した1m2あたりのグラム数を示す.Trは極微量の降灰があった地点を示す.Xは降灰が確認できなかった地点を示す.地形図は,国土地理院発行の20万分の1地勢図「室蘭」,「岩内」,「札幌」,「苫小牧」を使用した.

Fig. 1 Volcanic ash fall distribution by the 13:07- March 31, 2000 eruption. A broad outer line indicates distribution limit of the ash fall deposit. Contours within the broad line indicate isopleth lines (g/m2). Small circles in the map show ground survey points. Numbers beside the circles indicate ash sample weight per unit area (g/m2) in dry condition. "Tr" indicates survey point with a small amount of ash fall deposit (<1g/m2). "X" indicates survey point without ash fall deposit. 1:200,000-scale topographic maps "Muroran", "Iwanai", "Sapporo", and "Tomakomai" published by the GSI were used.

第2図 2000年3月31日13時7分〜の降灰の各等重量線図の面積(m2)と重量(kg/m2)をプロットした対数グラフ.対数グラフ上で直線近似できる区間ごとに,最小2乗法で近似直線を求めた.64g/m2,256g/m2,16384 g/m2の等重量線のデータの部分で区間を区切った.区間ごとに積分して降灰量を算出した.火山近傍(104m2)の層厚を1mとして近似直線を引いている.

Fig. 2 Relation between area (m2) and weight (kg/m2) of each ash fall isopleth for the 13:07- March 31, 2000 eruption. Approximation lines were determined using the method of least squares. The approximation lines were divided at 64, 256, and 16384 g/m2 values. The total ash fall weight was calculated by integration of the approximation lines in each segment. Ash fall deposit thickness near the source area (104m2) was estimated as 1m.

第3図 Mathematicaで,第2図の区間ごとの積分を行った計算式.第2図の各近似直線の傾きと切片の値を代入し,各積分区間の範囲を実数で入力して,区間ごとに降灰量を算出した.

Fig. 3 Equations to calculate weight of the ash fall deposit by the 13:07- March 31, 2000 eruption. Mathematica was used for calculation. Slope and intercept values of four approximation lines in Fig. 2 were used.

文献

宝田晋治・羽坂俊一 (2000) 北海道支所における有珠火山2000年噴火への対応(速報).地質ニュース,551,11-19.

宝田晋治・中川光弘・吉本充宏・北川淳一・吉田真理夫・宇井忠英・岡崎紀俊・広瀬 亘・石丸 聡・佐藤十一・太田良久(1999)北海道駒ヶ岳1998年10月25日の小噴火.1999年地球惑星科学関連学会合同大会予稿集,Vd-P014.

宝田晋治・吉本充宏・北川淳一・平賀正人・山元孝広・川邊禎久・高田 亮・中野 俊・星住英夫・宮城磯治・西村裕一・三浦大助・廣瀬 亘・石丸 聡・垣原康之・遠藤祐司・野呂田 晋・新井田清信・石塚吉浩・工藤 崇・相沢幸治・本間宏樹・江草匡倫・石井英一・高橋 良 (2001) 有珠火山2000年噴火の降灰と火口近傍の状況.地質調査研究報告.(印刷中)

宇井忠英・吉本充宏・古川竜太・石塚吉浩・吉田真理夫・宮地直道・勝井義雄・紀藤典夫・雁沢好博・野上健治(1997a)北海道駒ヶ岳1996年3月の噴火.火山,42,141-151.

宇井忠英・吉本充宏・佐藤十一・橋本 勲・宮村淳一(1997b)北海道駒ヶ岳1996年3月噴火の噴出量の再検討.火山,42, 429-431.

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