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Characteristics of GSJ

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地球科学の研究所としてみた地質調査所の特徴

 地質調査所の特徴の第一は,地球科学の研究の三つの主要分野である地質学,地 球物理学,地球化学の研究者がバランスよく共存して,共同研究を行える体制にあ ることである.しかし,地球科学の主要なテーマに関して,三つの分野の研究者が 有機的に結び付いた共同研究の体制が機能しているかどうかは,日本の地球科学全 体に共通した問題であり,地質調査所もひとり例外ではない.地質調査所において, それぞれの分野の研究者が各研究部門にどのように配置されているかを別表に示す. この表では,それぞれの分野の研究者の同定は,必ずしもその大学時代の専攻や入 所時の職能区分によらず,現在主としてどの分野の研究に携わっているかによった. また,二つ以上の分野にまたがって研究を行っている者もいるが,その場合は必ず しも本人の意識を確認せず,便宜的区分を行った.合計の数字から明かなように, 各分野の研究者の割合は,地質学 54%,地球物理学 25%,地球化学 21% である. 地質学,地球物理学,地球化学を専門とする研究者は,言うまでもなく,それぞれ の研究手法を中心に組織された地質部,地殻物理部,地殻化学部に多く在籍するが, 同時に,研究対象を中心に組織された部門(いわゆるプロジェクト部)にも必要に 応じて三分野の研究者が配置されている.これらの部門では,二つないし三つの分 野の研究者がひとつの部に共存しているのが特徴である.地質部,地殻物理部,地 殻化学部では,それぞれの分野の基盤的研究や基礎的研究に力をいれているが,同 時に,他の部門のプロジェクトに参加したり,自らも中心になってプロジェクト研 究を起こすことも行われている.一方,いわゆるプロジェクト部門では,重点研究 分野を対象としたプロジェクト研究を行うと同時に,各研究者の専門を生かした, それぞれのプロジェクトに関連した地質学,地球物理学,地球化学の基礎的な研究 テーマについても研究が行われている.

分野別研究者数 (1995年4月1日現在)
部門 地質学 地球物理学 地球化学
所長・次長 2 0 0
首席研究官 2 0 0
企画室 0 0 1
地質部 28 0 0
海洋地質部 17 5 4
環境地質部 20 6 3
地殻熱部 7 12 7
鉱物資源部 15 0 7
燃料資源部 7 0 4
地殻物理部 0 26 0
地殻化学部 0 0 18
地質情報センター 2 5 0
地質標本館 7 0 0
国際協力室 6 3 1
北海道支所 5 1 2
大阪地域地質センター 4 0 0
合計 122 58 47
(総計 227)

専門別研究者数
地質学 資源地質 36,海洋地質 21,層序・構造地質 23,岩石・鉱物 17, 第四紀地質・地震地質 17,火山・火山岩 8.
地球物理 重力・磁力 8,岩石実験 6,地震・弾性波 20,電気・電磁気 6, 熱学 7,リモートセンシング 7,情報 4.
地球化学 分析化学・放射化学 6,有機地球化学 7,同位体地球化学 10, 熱水系の地球化学 16,海洋地球化学・環境化学 8.

 次に,地質学,地球物理学,地球化学の各分野について,地質調査所の研究の特 徴を概観する。

地質学分野

 地質調査所における地質学分野の調査研究は,我が国の国土及び周辺海域の地球 科学的実態解明を目標に,所定の精度で系統的・組織的に野外調査を実施し,地質 図幅を初めとする各種地質図にまとめて公表する研究として行われてきた.また, 所内外の調査資料を200万分の1,100万分の1,50万分の1といった編纂図として総 括し,地球科学研究の基盤図を作成してきた.地質調査所の創立以来,地質部は我 が国全土を対象にした地質図幅作成のための調査研究を継続しているが,いわゆる プロジェクト研究部門においても,対象とする鉱床や構造の分布状況,発達状況を 目的に即した精度で調査し各種のテーマ地質図として公表している.
 地質調査所における地質学的研究の一つの特徴は,このため,いかに精度の高い 正確な地質調査を実施し,地質図に表現するかに重点が置かれてきたといえる.時 代とともに進歩する最新の知見を導入するとともに,あらたな調査技術や分析手法 をみずから開発し適用することが調査研究課題の中心であるといえる.油・ガス田, 炭田やいろいろな鉱物資源,地下水,地熱資源を対象とした各種資源地質図や,海 洋地質図,地質環境を表現した各種の環境地質図,火山地質図,活断層図などにそ れらの成果が表現されている.特に,近年の5万分の1地質図幅の研究においては詳 細な年代論にもとづいて新たな層序区分や地質体区分が行われるなどの革新的な精 度の向上が図られ,それに基づいた地質構造発達史が議論されている.
 地質調査所の地質学の調査研究ではこれらの地質資料の広域的な編纂によって, 日本列島規模,あるいは東アジアといった規模で地質や地質構造を区分し,広域的 なテクトニクスを議論する基礎資料を提供することも重要な研究領域である.
 地質学分野の研究の他の重要な側面,すなわち地質現象を支配している機構や成 因,法則性に関する研究は,従来は個別的になされ優れた研究が出されてきたが, 必ずしも組織的に進められなかった嫌いがある.しかし,近年では特別研究や重点 基礎研究,シーズ研究といったスキームのなかで意識的にこのようなテーマを取り 上げるようにしており,鉱床や地熱資源などの形成機構などで,モデル化や実験的 研究を含めた総合的な研究をおこない成果を上げている.今後は新たな社会的ニー ズに密着した明確な目標の設定と,地質調査所の特徴とする精度の高い調査研究を 生かし,理論的研究をも綜合させた問題解決型の研究の推進が一層重要であるだろ う.(小玉 喜三郎)

地球物理学分野

 歴史的に見ると,戦後,昭和30年代の中頃まで,◯◯鉱山物理探鉱のような研 究が多く,調査を行うなかで技術的な課題を研究していた.昭和30年代後半から は,民間企業のためのサービス業務は無くなり,◯◯法に関する研究,のように物 理探査の技術開発を前面に出した研究が行われるようになった.しかし,技術開発 を研究課題として掲げてはいても,研究目的の半ばは,データを得て,地下構造を 解析することにあった.その対象は,石油堆積盆,金属鉱物資源,海洋鉱物資源, 地熱資源など,地下資源に係わる地質構造の解析や異常の抽出であった.これらの 研究で得られた重力,磁力,電気,熱などのデータは,さまざまな目的のために解 析できるものであり,地球物理学的な解釈を行ったほか,基礎図幅の出版を行い, 科学的にも大いに貢献できた.地下資源以外の地球物理学的な研究は,資源探査技 術として発達した手法を,火山噴火や地震予知にかかる地下構造の解析に応用する 例が多かった.
 昭和50年代に入ると,筑波移転で岩石実験施設が充実したこと,地熱資源や地 震予知・噴火予知など,現在進行している物理的な過程を問題とする研究課題の比 重が増したことなどから,従来の探査技術にかぎられない多様な研究手法,たとえ ば微小地震観測,熱流量測定などが用いられるようになった.また,リモートセン シングや情報数理のように,新しい分野の技術的な課題にも取り組むようになった. リモートセンシングについては,資源衛星の打ち上げ計画が研究活動の大きな動機 付けになっており,現在も予算的な裏付けはないものの,後継の打ち上げ計画に活 動的な支援を行っている.
 このような変化を促した別な要因としては,研究者の世代交代が進み,高い研究 的訓練を受けた研究者がそろって,活力が高まったことがあげられる.
 このような変化にも係わらず,地球物理学的な研究ということでは基礎である観 測ネットを持っていないことは,地質調査所のひとつの大きな特徴である.これは, 物理探査の技術文化を継承しているためであるともいえるが,資源以外の分野では, 火山でも,地震でも,実績のある研究機関がすでに存在することによる.したがっ て,あらたに常設の観測点を設けて地球物理学的なデータを収集するよりも,これ からも広い意味での物理探査技術(アドホックな物理計測)によって地殻の物性, 物理的な過程を研究することが,生産的であると考えられる.また,重力や磁力に 代表されるような基礎的な地球物理的情報のコンパイルも,継続して推進すべき重 要な課題である.(花岡 尚之)

地球化学分野

 地質調査所における地球化学の研究は,地質学的試料の化学分析に対する所内外 からの需要に応えるサービス部門(当時の技術部)として発足した。その後1955年 (昭和30年)に技術部内に地球化学課が誕生し,1)岩石鉱物の同位元素の研究,2) 岩石鉱物の微量成分の研究,3)地質鉱床調査に必要な地球化学技術の研究をテーマ として本格的に地球化学の研究が始まった.さらに1985年(昭和63年)に技術部が 改組されて,地殻化学部という,地殻を構成する物質等の化学的性状に関する調査, 研究を行う部門が独立し,今日に至っている.これらの動きと並行して,海洋地質 部,地殻熱部,環境地質部のいわゆるプロジェクト部では,部の発足に伴ってそれ ぞれのプロジェクト研究に必要な地球化学分野の研究者を取り込んできた.また, 鉱物資源部,燃料資源部では,それぞれの分野の基礎的研究が深化するにつれて, 自然発生的に(或は世の中の学問的背景を反映しつつ)地球化学的研究グループが 育ってきた.今日地質調査所における地球化学分野の研究は,地殻化学部のみなら ず,これらの各部門の地球化学的研究の総和である.
 地殻化学部は研究手法を中心に組織された部門であるが,他の部門の地球化学研 究者は研究対象を中心に組織されている.両者が縦糸と横糸になって全体が構成さ れているのが地質調査所の研究体制の特徴であるが,別表の地球化学分野の専門別 研究者数の表現(研究手法による分類と研究対象による分類が混在していること) は,そのことをよく反映している.また,地質調査所における地球化学分野の研究 者は,必ずしも大学時代に地球化学や化学を専攻した者ばかりではなく,地質調査 所に入所した後に,組織上の要請や本人の研究上の興味から地球化学的研究に進ん だ者が多く見られる.
 地質調査所における地球化学の研究が岩石・鉱物の化学分析に端を発したことを 反映して,岩石・鉱物の微量成分,同位体の分析においては,高い水準にある.長 年にわたって系統的に行ってきた岩石標準試料の研究は,その成果のひとつである. 放射性起源同位体の地球化学的研究とそれに基づく地質年代測定の研究は,多くの 成果を上げてきた地質調査所の地球化学研究の中心的分野である.また,安定同位 体の地球化学的研究は,鉱床成因論や熱水系の研究,岩石成因論と結びついて独自 に発展してきた分野で,多くの成果を生んでいる.マグマ中の揮発性成分,熱水性 鉱床の成因,地熱水を含む熱水系の地球化学的研究に多くの人材を擁して成果を上 げていることも地質調査所の特徴である.近年,若手研究者を中心として,バイオ マーカーや同位体の研究に基づく有機地球化学の新しい発展が見られる.気圏・水 圏・岩石圏・生物圏にまたがる物質循環の研究は,地質調査所においてはまだその 一部に手がつけられているだけであるが,地球環境を見据えた今後の地球化学研究 の主要命題のひとつである.(松久 幸敬)


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